旦那様の独占欲に火をつけてしまいました～私、契約妻だったはずですが！～

お母さんたちは、無理して戻る必要はない、いくらでも家にいたらいいって言ってくれたけれど、私はいったいこの先、どうすればいいんだろう。

一晩考えても、その答えは出るはずなかった。



次の日、心配する両親やお兄ちゃんに「大丈夫」と伝え、出勤した。

俊也さんとは同じ職場の上司と部下の関係だもの。いつまでも顔を合わさないわけにはいかない。

それに今日まで俊也さんは出張の予定になっている。私も今日は、一日外回り。今日だけは顔を合わせずに済むから。

幸いなことにお兄ちゃんが、私がいつ戻ってきてもいいように一通りの物を揃えてくれていたおかげで、着替えやメイクに困ることはなかった。

仕事にプライベートを持ち込むわけにはいかない。家を出たら気持ちを入れ替えて、店舗を回っていった。

だけど街中で何度も仲睦ましい夫婦を見かけるたびに、足を止めていた。

「いいな……」

自然と漏れた声に、苦笑いしてしまう。

お互い愛し合ってこそ、夫婦という関係は成り立つはず。やっぱり最初から私たちの関係は間違っていた気がする。