旦那様の独占欲に火をつけてしまいました～私、契約妻だったはずですが！～

次の店舗がある駅に到着し、電車から降りて改札口へ向かっていると、織田先輩は急に「あ……！」と声を上げた。

「どうかされましたか？」

すぐに問うと、彼女は顔の前で手を合わせて謝った。

「よく考えたら私が戻るまでは姫野さん、育児休暇に入ることができないよね。……もしかして早く子供が欲しかった？」

「……えっ!?　そ、そんな子供なんて……っ!!」

思いがけない話に足を止めて、手を左右にブンブン振った。織田先輩もまた足を止め、私を見てキョトンとなる。

「子供はまだ考えていないの？」

「考えていないというか……」

むしろ考えられない、想像できないというか……。あぁ、でもそっか。結婚するということは、子供を授かる未来もあるんだよね。
当たり前のことをすっかり忘れていた。

「ごめんなさい。それはふたりで決めることよね。私がどうこう言う問題じゃないのに……」

謝る織田先輩に、ハッとなる。もしかしたら私が子供はいらない考えだと、勘違いさせてしまったかもしれないと。