旦那様の独占欲に火をつけてしまいました~私、契約妻だったはずですが!~
たしかにこの前も、彼の口からそんなことを聞かされたけれど……。なかなか信じられずにいると、織田先輩は人差し指を立てた。

「本当よ? それに姫野さんだけ、『芽衣ちゃん』って呼んでいたでしょ? 急な異動で緊張している姫野さんを気遣って敢えて下の名前で呼んでいたのかと思ったけど、門脇部長、姫野さんに一目惚れしたのかもしれないわよ?」

「そんな、まさか……っ!」

さすがにこれには声を荒らげずにはいられない。

あの門脇部長が私に一目惚れだなんて、絶対にあり得ない。なのに織田先輩は目を瞬かせた。

「その可能性だって充分あると思うわよ? なんて言ったって、独身貴族の彼が結婚を決めたくらいだもの。……姫野さんは仕事でもプライベートでも、もっと自信を持ってもいいと思うな」

「織田先輩……」

自信なんて持てないよ。仕事はまだまだ織田先輩の足元にも及ばないし、門脇部長とだってこれから先、どうなるのかまったくわからないのだから。

「行こうか」

「……はい」

先に歩き出した彼女の後を追う。
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