次期院長の強引なとろ甘求婚


 バラの甘く高貴な芳香に包まれる回廊は、自分がプリンセスにでもなったような優雅な気分にさせてくれる。

 回廊を抜けると、可愛らしい白い噴水が設置されたローズガーデンが広がった。


「あっ……ブルードレスだ」


 噴水を横切り、レンガが敷き詰められた通路を進むと、素焼き鉢に植えられたブルーローズを見付ける。

 薄紫にも見える、青みがかった花は、赤やピンクのバラとは違ってどこか愁いを帯びたようにも見えるけど、私はこのシックな雰囲気がとても好きなのだ。


「本当によく知ってて感心する。バラの種類だって膨大にあるんでしょ?」

「そうですね……二万種類以上あると言われてます」

「二万?! え、まさかそれ全部覚えてるの?」

「いえ、それはさすがに……毎年たくさん新品種も出てくるので。常に勉強中です」


 よく流通している品種や、人気のもの、なるべく多くの種類を覚えようと努力はしているけれど、バラは本当に奥が深い。

 一見同じものに見えるくらい似ているものなども多く存在するのだ。

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