ビタースウィートメモリー



ネイビーのシャツワンピースはウエストがキュッと絞られているが、肩にも胸にも余裕がある。

膝より少し上の丈で、悠莉のすらりと伸びた足を強調するようなデザインだ。

試着室のカーテンを開けると、吉田は顔を赤らめて惚けていた。

聞いているこちらが恥ずかしくなるほど絶賛されたため、悠莉は無言でカーテンを閉めた。

ローズレッドのミモレ丈のワンピースのほうはシフォン生地で、風通りが良さそうだ。

夏に着たらきっと涼しいだろう。

頭からすっぽり被ってシワを伸ばすと、先ほど着たシャツワンピースより露出が少なく、体型もはっきりとはわからない。

しかしサイズは合っているし、スタイルが悪く見えるほどではない。

カーテンを開ければ、低く唸りながら吉田は悩んでいた。


「うーん、それはそれで青木さんのナチュラルな美しさを引き立てていて可憐だ」


何も聞こえていないふりをして、さっさと決めろと悠莉はせっついた。

今から死刑執行のためのボタンを押すような顔で悩み抜いた末に吉田が選んだのは、ローズレッドのワンピースだった。


「俺の好みはシャツワンピなんだけどね。今日履いている靴が白だから、こっちのほうが綺麗にまとまる」


細かいところまで見ているな、と感心している間に吉田は精算を済ませた。



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