ビタースウィートメモリー
episode2
日が沈むよりも早く解散し、悠莉は一人帰路に着いた。
きちんと告白を断ったことで、吉田との関係にモヤモヤしたものがなくなり、肩が軽い。
電車の窓にうつる自分は、ワンピース姿だからか、誰か違う人のようだった。
せっかく買ってもらったこの服だが、おそらくもう二度と着ることはないだろう。
洗濯した後は押入れにでも閉まって、頃合いを見てフリーマーケットにでも出そう。
それまでは告白された記憶と一緒に、近い場所に留めておくのだ。
なんとなくスマホを見ると、吉田からLINEが来ていた。
デートに付き合ってもらったお礼の言葉が、丁寧に打たれている。
本当にマメだなと感心し、返事を打ちながら、悠莉は大地のことを考えた。
この手のことは、結論が出たら早めに連絡したほうがすれ違いやトラブルを避けられる。
大地に自分の告白の返事をするべくLINEの画面を開くが、ただ文字で返すのは素っ気ないだろう。
ここはきちんと、直接会って言わねばなるまい。
明日話したいことがある、とLINEを送れば、すぐに既読がついた。
相変わらず日曜日は暇なようだ。
返信は、明日の夜に甲州屋でという手短なものだった。
最近毎日のように騒がしかったが、これで平穏な日々が戻る。
明日は、大地と恋人としての付き合いを始める記念すべき第一日目だ。
今日とはまったく違うベクトルで気合いが入っていた悠莉は、その後スマホをチェックしなかった。