神在(いず)る大陸の物語【月闇の戦記】<邂逅の書>
「そなた達の掟は、まこと厄介な掟だな・・・・」
 思わずそんなことを呟いて、スターレットはまじまじと、鋭い表情をしたまま茶色の両眼でこちらを見据えるラレンシェイの美麗な顔を見る。
「・・・・・臆病者め!リタ・メタリカの大魔法使いが聞いて呆れる!」
 そんなラレンシェイの言葉に、最初に激したのは決してスターレット本人ではなかった。
 まだまだあどけない顔を上気させて、傍らにいたウィルタールが声を荒げる。
「スターレット様に向かって臆病者とはなんだ!?命を取られなかっただけましじゃないか!?助けてもらってその言い草はなんなんだ!?」
「よせウィルト、本当の事だ」
 そう言って、スターレットは、ラレンシェイに掴みかからんばかりに怒り心頭のウィルタールを制した。
「しかし!スターレット様!?」
 納得がいかないウィルタールは更に食い下がるが、スターレットはそんな彼に向かって小さく微笑むと、首を横に振るのだった。
 そして、その銀水色の綺麗な瞳で再び、異国の誇り高い秀麗な女剣士の鋭い両眼を見据えたのである。
「王家の内情を探りたいのなら、このまま探ればいい・・・・
だが、以前も言った通り、このスターレットがいる限り、エストラルダ帝国がどんな戦略をもって戦を仕掛けてきても、リタ・メタリカが落ちることはない」
「ならば・・・・ここでおぬしを殺せばいいだけの事。おぬしが死ねば、このラレンシェイの屈辱も晴れる」
 そう言い放つなり、ラレンシェイは、突然ドレスのスコートを片手でめくり上げると、その下に隠し持っていた細身の剣(レイピア)をスラリと抜き払ったのである。
 見事な赤毛の前髪から覗く鋭利な茶色の眼光が、剣の切っ先にいるリタ・メタリカの雅な魔法使いを真っ向から睨み据えた。
しかし、彼は身動(みじろ)ぎもしないで、そんな彼女の殺気立つ視線をその銀水色の綺麗な両眼で受け止めている。
「貴女は!まだそんなことを言うのですか!?」
 慌てて止めようとするウィルタールを、再びスターレットの手が制した。
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