神在(いず)る大陸の物語【月闇の戦記】<邂逅の書>
       *
 意識を離したままのリーヤティアを抱えたエストラルダの女剣士ラレンシェイと、大魔法使い付きの見習魔法使いウィルタールが、長い階段を下って階下の広間に辿り着いた時、そこはすでに、無数の近衛兵達の屍と、獣の形をした黒い魔物がはびこる無残な戦場と化していた。
 魔王と呼ばれる青年が解き放った闇の魔物が、今や城中に出没して、あちらこちらで同じような騒ぎを起こしているようだった。
 辛うじて、王族の間には大魔法使いの特殊な結界が張りめぐらされ、数人の王宮付き魔法使いの手によって守られているが、それ以外の場所では魔法を持たぬ兵達が魔物を相手にてこずっているに違いない。
 ウィルタールは、青い顔をしながら、広間で繰り広げられる異国の兵達と魔物の攻防をまじまじと見やっていた。
「な、なんて・・・・ことに!?」
 勇ましい女性達が怯みもせずに鋼の刃を翻し、真っ向から魔物の首を跳ね、その牙をかわしてものの見事に闇の獣を両断しているではないか・・・
その時、ラレンシェイと同じ赤い布を額に巻いた女剣士の一人が、階段の下で鋼の剣を構えた彼女に叫びを上げたのだった。
「隊長!!こやつら!切っても切っても虫のように沸いて出ます!!」
「仕方あるまい!そやつらは魔物故(ゆえ)な!!」
 ラレンシェイはそう言うなり、抱えていたリーヤの体をウィルタールに渡した。
 ウィルタールは、慌てて彼女のからリタ・メタリカの姫の体を丁寧に抱きとめると焦った顔をして叫ぶのだった。
「何をするおつもりですか!?」
「決まっておろう!魔物を切り捨てる!!おぬしはそのお転婆姫を王の元へと送ってやればいい!!」
 閃光のように鋭く輝く鋼の剣を翻し、ラレンシェイが、美麗な顔を厳(いかめ)しく歪めて、牙を向いて踊りかかった魔物の顔面を真っ向から煌く刃で薙ぎ払った。
< 31 / 198 >

この作品をシェア

pagetop