全てを愛して
両親・・・か・・・
「・・いないんです。」
猛「え??」
「両親、いないんですよ。小さい時に他界して・・・ずっと親戚の家で育ったんです・・・」
お酒を飲んでいるからか、彼が喋りやすい雰囲気なのか、普段なら絶対に喋らないことまでスラスラ喋ってしまう。
「事故だったんですけどね・・・私の誕生日の日でした・・・私が我が儘を言ったばかりに・・・両親が出掛けて、その出先で事故に・・・」
私を引き取った叔父は、それはもう私に強く当たった。
"お前のせいで死んだんだ!!罪を償え!!"
そう言われ育ってきた。
満足に食事も与えられず、気に食わないと殴られた。
当たり前だが高校になんか入れてもらえるわけもなく、中学を出ると追い出され、以後一人暮らしをしてきた。
月に数回、叔父からお金の無心があるが、それも私の罪と思えば・・・
猛「そっか、ツラいこと聞いちゃってごめんね??じゃあ今は親戚の方と暮らしてるの??」
「いえ、一人暮らしなんです。」
猛「一人暮らし・・・こんな可愛い子が一人暮らしなんて心配だな。」
「大丈夫ですよ。もう7年くらいになるので。」
猛「ん??7年??」
「・・あぁー・・・」
しまった、普通高校生の子は一人暮らしなんかしないか・・・
あまり事情を話すわけにもいかないし、けっこう重たい話だからな・・
「そうだ、ビール飲みますか??」
猛「えっ、あ、うん。」
「すいませーん、ビール2つ。」