全てを愛して
谷「お電話変わりました。谷中です。」
[谷中さん、お疲れ様です。]
谷「お疲れ様です。」
[ふふ、敬語やめて下さいって言ったのに戻ってますよ??]
谷「・・癖だから・・・なかなか難しいよ。」
[そうですかねー・・・あっ、そうそう、谷中さんもお時間あるならご一緒にいかがですか??]
谷「ありがとう。でも、お邪魔じゃないかな??」
[そんなわけないじゃないですかー。]
彼女は、変わっている。
彼女の存在を知ったのは、2ヶ月前だった。
俺がチーフマネージャーを勤める"THREEDAYS"は3人組で、デビューから15年、益々人気をものとし、忙しい日々を送っていた。
しかし、私生活はというと・・・
THREEDAYSというブランドを我が物にしようと、女が群がる群がる。
3人はそれをちゃんとわかっていて、一夜限りの女が日替わりでいた。
本気になれない、信用できない、そう思っているようだった。
しかし1か月前、猛さんの様子が少し変わったことに気付いた。
女遊びをしている感じもなければ、頻繁に誰かと連絡をとり、コソコソと出掛けて行く。
周りのスタッフに聞いてみると、お気に入りの女がいるという事実を知った。
俊樹さんと幸也さんはまだ良いのだが、猛さんは何故だが女運が最強に悪い。
以前、妊娠したと嘘をついた女と、俺に何の相談もなしに結婚してしまったことがあった。
結局俺が嘘を突き止め、1日で離婚。
優しく包容力もあるのだが、そういう変な女ばっかり寄ってくる。
女の処理は猛さんが一番手がかかるのだ。
猛さんが仮に本気だとして、もし相手がとんでもない相手だったら、傷付くのは猛さんだ。
これは相手に会わなきゃならない。
思い立ったら吉日。
すぐさま行動にうつし、相手を調べた。
普通の一般人で情報は少なかったが、芸能人、特に歌手には免疫があって、裏方の仕事をしているようだ。
会社を張り込み、彼女が出てくるのをひたすら待った。
午前3時
何時間も待ち、もしやいないのではと思ったが、彼女は中から出てきた。
作業着を着ていたが、遠目からもわかる。
かなり可愛い。
可愛いけど中身はわからないからな。
谷「すみません。結城心愛さんですか??」
突然声をかけたにも関わらず、俺が来るのをわかっていたのか
「・・・桜木さんの・・・マネージャーさんですか??」
そう言った。