全てを愛して
二人が深刻な顔をして黙りこんでしまった。
谷「あの・・・お二人はいつから心愛ちゃんと??」
凌「俺らは、あいつが産まれた時から知ってます。あいつの両親は、俺らの両親と幼馴染みだったんです。それもあって家族ぐるみでの付き合いで・・・」
谷「心愛ちゃんのご両親はいつ亡くなられたんですか??」
瞬「・・・心愛が・・・7歳の時でした。その日は心愛の誕生日だったんですけど、大雪で・・・ケーキを用意できなかったご両親を、心愛が泣いて怒ったんです・・・ケーキがない誕生日なんて誕生日じゃないって・・・ご両親は危険なのをわかった上で、車で出掛けました。その出先で事故に・・・」
凌「でもあいつが悪い訳じゃないんですよ・・・心愛は我が儘を言ったから亡くなったと思っているようですけど・・・本当は、ケーキはあったんです。外に出る口実を作るためにそう言っただけで・・・」
瞬「あいつはそれをわかってるはずなのに・・・あの馬鹿な親戚にまで・・・」
猛「親戚??心愛を引き取ったって人??あまり折り合いが良くないとは聞いたけど・・・」
瞬「折り合い・・・か・・・そんな簡単にものじゃないです。」
猛「どういうこと??」
凌「・・ハァー・・・あいつは・・・」
「ストップ・・・」
凌「心愛・・・」
「人の話を勝手にしちゃ駄目でしょー??」
いつもとは違う、無理した笑顔だ。
「ごめんね、変な話して・・・本当この二人は目を離すと・・・今日は帰るね??」
猛「心愛・・・」
俺は扉の前に立っている心愛に近寄り手を握ると、微かに震えているようだった。
「・・・」
困った笑顔を浮かべ、俺の手を握り返した。
凌「・・・」
瞬「凌駕・・・」
凌「うん・・・わかってる・・・谷中さん、後から少し良いですか??」
谷「えぇ。お話伺いますよ。」
3人がコソコソ話しているのを、心愛だけが気付いていないようだった。
俺は俊樹と幸也に視線を送り、心愛をこの部屋から出すように目だけで伝えた。
俊「あっ、そうだ心愛・・・次のコンサートのことで相談したいことがあったんだ。少しいいか??」
「え???・・うん、大丈夫だけど・・・」
幸「図面あっちのミーティング室のパソコンだ。あっち行こうぜ。」
うまいこと心愛が連れ出され、俺と谷中、桐生くんと錦くんの四人となった。