全てを愛して

瞬「優真のバンドはめきめきと実力をつけて、スカウトもきていたりしてあとはデビューするだけでした。でもなかなか良い条件を出してくれる所がなくて、話が進まないでいたんです。」

猛「良い条件って・・・スカウトが来るだけでも凄い話なのにどうして条件なんか気にしてるの??」

瞬「・・・早く安定したかったんでしょうね・・・デビューして、たくさん稼いで・・・心愛と結婚したいってよく言ってましたから・・・でもそれは大きな夢のような話です。ほんの一握りの人間しかデビューしてすぐ人気なんて出ませんから。」

それはよくわかる。
俺は運よくその一握りの人間になれたけど、そうじゃない人間なんて星の数いるだろう。

瞬「・・・・そんな時に・・・・スカウトのプロデューサーが優真に声をかけました。その話はとても高条件で・・・曲も有名な人が作ってくれて、条件さえのんでくれれば、すぐにデビューできる・・・そういう話でした。」

谷「・・・・条件??・・・」

瞬「えぇ・・・・そのプロデューサーは、手伝っていた心愛を・・・差し出せと言ってきたんです。」

猛「まさか・・・さ・・・差し出したのか・・・??」

瞬「・・・えぇ・・・・・・俺らが気付いた時にはもう事後で・・・全てが終わったあとでした・・・・・あいつが言ったそうなんですよ・・・我慢してくれたら、結婚もできるし、デビューもできる。お前さえ我慢してくれれば全て丸く収まる。心配しなくても俺がちゃんと嫁にもらうからって・・・・でも現実は違った・・・」

凌「あいつは・・・・優真は・・・・心愛を・・・」

二人は思い出しているのだろう、涙を流していた


凌「くっ・・・・・・優真は心愛に言ったんですよ・・・俺らの前で!!・・・・お前の体は汚れている・・・もうお前を愛せない悪いって・・・」


なんて残酷な話なんだろうか・・・

彼女は彼のためにたくさんのことを必死に我慢してきたのに・・・


瞬「心愛は・・・・・・泣きもしませんでしたよ・・・それを受け入れた・・・それからあいつは壊れてしまった・・・泣きもしない、飯も食わない、睡眠もとらない・・・ただ、毎日仕事に行って、我を忘れるように仕事をして・・・・皮肉なもので、気付けばあいつは社員になって主任になっていた・・・主任になってからはもっと酷い。酒に浸り、煙草を吸って・・・早く死にたいとばかりの生活を送っている。」

谷「だから彼女の生活の世話を??」

凌「えぇ、それもあるんですけど・・・あいつ昔虐待された影響もあって・・・一人で飯が食えないんです。」

"昔・・・・少しツラい思いをしてたことがあって・・・誰かがいないと食べれないんです。"

何も、知らなかった。

彼女はいつも笑顔だった。

人の心配ばかりして・・・


凌「心愛が、ここ何ヵ月もコソコソ誰かと連絡をとってるのは知ってました。良い人が出来たのかもしれないなら、それはとても良いことだし・・・あいつが前に進めたのなら見守ってやろうって俺達は思ってきました・・・・・・でも・・・貴方が相手なら話は違います。」

猛「・・・」

凌「桜木さん・・・お願いします・・・あいつから手を引いていただけないでしょうか・・・」

瞬「貴方の気持ちが本気なのはわかります・・・この間のコンサートの時に、スタッフの人が話しているのを聞きました。最近遊んでいないそうですね・・・それはわかりますけど・・・でも貴方は別に心愛じゃなくても良いはずです。他にも・・・いるでしょ・・・」

他にも??

凌「お願いします・・・心愛をこれ以上傷付けたくないんです!!何も言わずに・・・・・」

傷付ける??

瞬「・・・心愛には、俺らから言います。アイツもわかってるはずです。貴方にはもっとふさわしい人がいると思って・・・告白を受け入れられないんです・・・・・・まだ始まってないことですから時間が解決してくれますし・・・」

ふさわしい人・・・
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