全てを愛して
ガチャ
凌「心愛・・・」
「・・何で・・・何で話しちゃったの??凌兄・・・瞬兄・・・」
立ち上がり、震えた声で問い掛ける
凌「・・・俺らはただ・・・お前に・・・」
「わかってる!!・・・わかってるから・・・私には猛さんと付き合う資格なんかない。」
凌「違うそうじゃないんだよ!!ただお前が心配で・・」
「違くない!!違くないよ・・・私では駄目・・・私は汚れてる・・・・優ちゃんのことを不幸にしちゃった私が・・・幸せになったらいけないのに・・・」
凌「お前何言ってんだよ!!100パー優真が悪いだろ!!」
錦くんが心愛の肩を掴んだ
「そんなことない!!私が悪いの!!!・・・私の周りは・・・皆不幸になってく・・・だから私のせいだよ・・・」
凌「お前・・・ずっとそんな風に思ってたのか??自分のせいだって・・・思ってたのかよ・・・」
「ママとパパだって・・・叔父さんだって・・・優ちゃんだって・・・凌兄も瞬兄も・・・」
凌「は・・・??俺らが・・・俺らが何だってんだよ!!俺らがいつ不幸になったってんだよ!!!俺らがお前にしてきたことが不幸だとでも言いてーのかよ!!」
猛「桐生くん少し落ち着いて!!」
今にも胸ぐらを掴みそうな桐生くんを、俺と俊樹で押さえ込んだ。
「凌兄と瞬兄も!!!!本当は公務員試験受かってたの知ってたよ・・・」
「「!!」」
「なのに・・・私が追い出されて働かなきゃいけなくて・・・今の会社でアルバイト始めて・・・優ちゃんが心配して二人を入社させたんでしょ・・・」
凌「・・・優真から聞いたのか・・・」
「私言ってなかったけど・・・四人で会った後・・・1度だけ二人で会ってるの・・・その時・・・いろいろ聞いた・・・」
凌「いろいろって・・・何だよ・・・」
「・・・」
心愛は何かに堪えるような顔をしていた。
瞬「心愛・・・話してくれよ・・・俺らの知らない所で・・・あいつと何話した・・・何言われたんだよ!!言ってくれよ!!」
桐生くんは悲痛の表情で、心愛に近寄った。
瞬「・・・どうして黙ってんだよ・・・」
「・・・・・・・もう・・・いい・・・ごめん・・・私が悪かったね・・・感情的になりすぎちゃったよ・・・」
瞬「心愛!!」
心愛は諦めたような顔をして、カバンを持って俺の前に立った。
「猛さん・・??」
猛「ん??」
「今日は・・・ありがとう・・・」
猛「・・・うん・・・」
いつも目を見て話してくれるのに、目線が合わない。
「・・・それに、俊ちゃんも幸ちゃんも・・・谷中さんも・・・せっかくお休みだったのに、なんだかゴチャゴチャ騒いじゃって・・・ごめんなさい。」
俊「気にするなよ??休みなんていくらでもあるんだしよ。」
幸「そうだよ。たまにはこうやって話す日だって必要だよ。」
「・・ん・・・そうだね。」
なんだろう、目の前にいる心愛が、凄く遠く感じる。
「今日はもう帰ろうかなー。なんか変な空気になっちゃったし。」
そう明るく言う心愛に違和感を感じたけど、言葉がうまく出てこない。
桐生くんと錦くんは、そんな心愛を見て呆然としていた。
「谷中さん」
谷「・・ん??」
「こんなに騒いで・・・事務所の方々にご迷惑をおかけしちゃいましたよね??」
谷「大丈夫。扉さえ閉まってれば防音だから、誰も何も聞こえてないよ。」
「そうですか・・・良かった・・・じゃあ、私はこれで失礼します。」
猛「・・ここあ・・・」
心愛の手首を掴んだ
何故だか、声が震える。
「・・・・・もう・・私のことなんて待たないで良いから・・・幸せになって・・・」
彼女は俺を振り払い、出て行ってしまった。
最後まで目が合うことはなかった。