全てを愛して

それから1週間

彼女との連絡は途絶えてしまった。

あの日の夜から、毎日電話をかけているし、LINEだって送っている。

出てもくれないし、既読にもならない。

猛「・・・・今日も出ないか・・」

俊「俺のも出ない。」

幸「・・・桐生くんと錦くんも、職場で会ったりはしてるみたいだけど、必要最低限の会話だけで、プライベートな連絡はとれてないみたい。家の鍵まで変えられちゃって入れないって・・・」

猛「どうしてるって??」

幸「・・・何もなかったかのように過ごしてるって・・・」

俊「・・・殻に・・・閉じ籠っちまったんだな・・・最初から決めてたんだろうな・・・全てを知られちゃったら俺らとは離れようって。」

幸「前から、危うい雰囲気はあったよな・・・きっと過去に重たいもん背負っちゃったんだろうなって思ってたけど・・・まさかあそこまでとは思わなかった。」

俊「・・・あんな小さな体に・・・どんだけ乗せてんだろうな・・・」


連絡が取れなくなって、気付いたことがある。

俺は心愛がどこに住んでいるのかを知らない。

普段どこで飲んでるのかも知らない。

毎回どこかで飯を食ったり、俺の部屋で話したりするだけで、特別どこかに出掛けたこともない。

心愛が好きな食べ物だって知ってるし、好きなことだって知ってる。

付き合ってはないけど、お互いを大事に想う気持ちは一緒のはずだ。

それでも付き合うまでにいかなかったのは心愛が・・・

俺には別の相応しい奴がいると思っているからで、最低な元彼との約束を大事に守っているから。

いったい何の約束をしたんだよ・・・

何でそんな最低な奴の約束なんか・・・

まだ好きってことなのかよ・・・


繋いだ手の温もり

抱き締めた温度

触れた唇


俺は忘れられないのに・・・


谷「失礼します。」

俊「どうした??」

谷「・・西園寺優真のマネージャーに会ってきました。」

猛「・・どうだったんだ??」

谷「・・・胸くそ悪い奴でしたね。」

谷中は心底軽蔑するような顔をしていた。

俊「話してよ。」

谷「・・・西園寺優真のデビューに関して、プロデューサーが声をかけたと桐生くん達は言っていましたが、もともとは事務所が"Heart lover"を会社に入れたくて、事務所社長がマネージャーに指示をだし、マネージャーがプロデューサーにそうするようにと金を渡していたことがわかりました。」

俊「事務所が仕組んだことってことかよ・・・くそ会社だな・・・」

谷「・・・事が済み・・・事態が明るみにならないよう・・・・マネージャーは、心愛ちゃんに個人的に会い、口止め料として100万を渡していました・・・つまり、私が初めて声をかけた時・・・猛さんとは何もなかったことにしろと口止め料を持ってきたと思ったようですね。」

そいつと同じに思われるのは心外だとばかりに話を続ける

谷「しかし、心愛ちゃんは後日お金を事務所に送り返しています。」

俊「・・・そうか・・・西園寺ってやつはそのこと知ってるのか??」

谷「どうでしょうかね・・・それは本人に聞かなきゃわからない話です。」

幸「共演してるけど、喋ったことってないよな。なんつーのかな・・・あのグループ全然仲良く見えないし、誰も喋ってねーもんな。」

俊「あぁ、ねーなー・・・ただ前に聞いたんだけど、グループのどいつか知らねーけど、女孕ませて結婚するみたいなの聞いたぞ。」

幸「下手くそかよ。」

谷「それは事実のようです。女を孕ませたというのが西園寺優真ですよ。」

「「「!!!」」」

谷「まだ公にはしていないみたいでしたけど、そちらの対応でバタバタしてて、話はこれくらいしか聞けませんでした。」

俊「十分だよ・・・ハァー・・ったく・・・なんつー奴なんだよ・・・」

幸「・・・猛、お前どうするつもりなんだよ??」

猛「そうだな・・・」

コンコン

「TAFの桐生さんと錦さんがお見えです。」

今日は打ち合わせだったな。

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