全てを愛して


カタカタカタカタカタカタ

「結城主任、ハンコ下さい。」

「・・・・はいよ。」

「ありがとうございます。」

ピリリリリ

「お電話ありがとうございます。TAF結城です・・・いつもお世話になっております。」


あれから、1週間か・・・


全てを知られ、自ら手を離した。

きっと彼らは・・・

猛さんは、私の話を聞いたからって態度を変えたりはしない。

そんなことはわかってるけど、それとこれとは話が別なんだよね・・・

凌「・・・・主任・・・」

「・・・はい・・・」

凌「・・・」

凌兄が何を言いたいかなんてわかる。
でも仕事とプライベートは分けてるから、迷ってるんだね・・・
ごめんね・・・

「・・・ハンコ欲しいなら書類持ってきてね。」

凌兄と瞬兄とも距離を置くことにした。

嫌いになったとかそんなんじゃない。

もう自由になってほしいと思ったから。

私は一人で大丈夫だよ、一人でもやっていけるから。

心配しないで。

「ハァー・・・ごめん、一服してくる。」

「いってらっしゃい。」

会社にある、喫煙ルームに向かう。

「カチッ・・・・・フー・・・・・」

日がたつにつれて、会いたい気持ちは大きくなる。

私は彼を本気で好きになってたんだな・・・

そんな資格すらないのに、彼を待たせる真似をして・・・

もう本気になることなんてないと思ってたのに・・・

優ちゃんで最後だと決めたんだけどな・・・

「・・・」

仕事にならないな・・・

今日はもう終わってるし上がるか・・・

えっと皆の予定は・・・

"桐生、錦 THREEDAYSコンサート打ち合わせ19時"

ズキン

「・・・やっぱ仕事にならないね・・・・ごめん、今日はもう上がるから何かあったらスマホ鳴らして??」

「珍しいですね。体調悪いですか??」

「んー??・・・うん、ちょっとね。」

「主任普段仕事入れすぎですよ。ゆっくり休んでくださいね。」

「ありがと・・・お疲れ・・」

社を出て歩く

バーで飲むかな・・・

凌「心愛!!」

「・・・どうしたの??書類見つかった??」

凌「体調悪いのか??喘息・・出てるとかじゃねーよな??」

「・・・」

凌「・・・飯ちゃんと食ってんのか??・・・顔色悪いぞ・・・新しい鍵貸せよ。一緒に帰ろう。何か作ってやるから・・・」

「凌兄・・・自由になって??」

凌「え・・・」

「・・・・今まで手のかかる妹でごめん、もう大丈夫だから。」

凌「何が大丈夫なんだよ・・・何で何も言ってくれねーんだよ・・・心で思ってることぶつけてこいよ・・・そんなずっと溜め込んでたらお前本当に壊れちまうぞ!!」

「・・・」

凌「もういいよ、鞄貸せ。少し熱っぽいな・・・」


壊れてしまえばいっそ楽なのに。

何の感情もない、いらない。

そしたら楽になるのに・・・

「打ち合わせに向かわないと間に合わないよ。」

凌「・・・ほら、鞄貸せ・・・」

「・・・打ち合わせ・・・行って??」

凌「・・・瞬が行くから・・」

「二人が・・・担当だよ??・・・THREEDAYSは、コンサートを中心としてるグループなのわかってるよね??コンサートの打ち合わせは、毎度いろんな注文が入る。最高の舞台にするために・・・それに応えなきゃいけないんじゃないの??」

凌「・・・」

「・・・コンサートはね・・・三人にとって特別なの。」

凌「・・・わかった・・・家で待ってろよ・・・終わったら行くし、鍵開けとけよ。」


凌ちゃんごめんね。

もう私には構わないでいいから。
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