全てを愛して
⑥
コンサート前日
俊「曲のセットリストだけど、少し変更したい。」
幸「今更変更するのか??ちょっと間に合わないんじゃねーの??」
俊「いけないか??」
幸「んー・・・」
いつもならいち早く反対する猛が静かだ。
幸「猛??」
猛「何??」
幸「いつもなら反対するじゃん。」
すると少し考え込み
猛「あぁー・・・だな。でもなんか・・・俺らならやれるじゃんって思うんだよ。幸ちゃんは無理そう??」
穏やかな顔をして俺に言った。
猛は変わった。
心愛と付き合うようになり、精神的に落ち着いた。
前は少しいい加減だったり、仕事もある程度頑張れば良いって感じだったが、最近は積極的に仕事も入れてるみたいだし、心愛は猛に良い影響を与えているようだ。
心愛も、猛と付き合うようになってから一度会ったが、前よりもっと穏やかになった感じがした。
こちらが羨ましくなるくらい、絵になるカップルだと思う。
幸「よし!!いっちょ頑張ってみるかな。」
俺が諦めた女だ。
でも大事なのは変わらない。
今は妹のように可愛い。
俊「じゃあ音響チェック行くか・・・心愛はまだ来ないの??」
猛「んー、わかんねーな。あっ、なんか仕事だから初対面のふりするからって頼むねって言ってたよ。」
俊「了解。なんか心愛の仕事姿見るの初めてだからウキウキするな。」
幸「どんな感じなんだろうな。」
猛「凌駕によると、普段とは全然違うらしい。あとなんか心愛に崇拝した人達も来るらしくって、どんなんなのか俺はそっちが気になる。」
幸「崇拝者??どんなんだよ(笑)」
いつものコンサートも、いつもよりワクワクするのは何故だろうな。
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まだステージには何もない。
いつも来る、凌駕と瞬のチームメンバーはわらわら集まっているようだが、後はまっさらだ。
佐「おーい、若造共。」
俊「チッ・・若造じゃねーし。」
佐「俺から見たら若造だ。」
佐伯重蔵、年齢70歳
厳つい、端から見たらあっち系の奴に見えるが、こう見えて演出家としてはかなりの有名人。
海外からも高い評価を得ており、THREEDAYSのコンサートも毎度ではないが、このおっさんが演出している。
仕事にはかなり厳しく、演者である俺らに対しても強烈だが、こんな強烈に意見してくる人間も俺らからしたら珍しくて、苦手だが嫌いではない。
俊「おっさん、今回の演出大丈夫だろうな??」
佐「お前誰に言ってんだ??完璧に決まってんだろ。」
かなりの自信家。
それ以上に出来も最高ときているもんだから、文句も出ない。
佐「今回は特に良いのが出来るぞ。取って置きの人間を用意してるからな。そろそろ来るはずなんだがな・・・」
ガチャっ
後ろの客席入り口が開き、見慣れない顔の人間が何人か入ってきた。
作業服を着て、よく工事現場で見かける兄ちゃんが腰に巻き付けているような太いベルトに工具をたくさん着けて、歩く度にチャラチャラ音がする。
芸能人の俺から見ても、イケメンばかりだ。
爽やかな体育会系のような人もいれば、銀縁眼鏡に髪の毛を整えたスーツを来たらエリートサラリーマンにしか見えないし見た目のやつもいる。
また扉が開いた
「「「「「主任、お疲れ様です!!!」」」」」
「「「!!!」」」
声を揃え大合唱
ホールに声が響き渡り、俺と俊樹と幸也は驚き体をビクリとさせた。
そして颯爽と中に入ってきたのは
「お疲れ」
いつもと雰囲気の違う、俺の愛しい彼女と凌駕と瞬だった。