全てを愛して
"桜木猛"さん
ホテルでは気付かなかったけど、けっこう有名な歌手だった。
THREEDAYSというバンドで、最近月9のドラマ主題歌になったと話題になってたような・・・
仕事柄・・・
私の本業は、イベント会社で、主にライブ会場の設営撤去をしているんだけど、歌手は見慣れてるし、特に何も思わないんだけど・・・
彼はなんか変わってる。
偉そうでもなく、かと言ってオーラがないわけではなく・・・
不思議な感覚がした。
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夜食事に誘われ、着替えに帰ったは良いけど・・・
「あんな有名人だし・・・ドレスコードとかあるレストランとかだったらどうしよ・・・苦手なんだけどなー・・でもラフな格好では駄目だよね・・・・電話で聞いてみる・・・??でも仕事って言ってたし・・・・着信入れとけばいっか・・・」
返答によって服装を考えよう。
[もしもし、心愛ちゃん??]
低い声で、その中に甘さや優しさを含んだ色っぽい声。
「はい、お仕事中申し訳ありません。」
[まだ仕事じゃないから大丈夫。どうしたの??]
「あの・・・ちょっとお聞きしたいことがあって・・・」
[ん??なに??]
「今日のことなんですけど、どこで食事するとかもう決めてらっしゃいますか??」
[いや・・・心愛ちゃんが行きたいところで大丈夫だよ??あっ、若いしフレンチとかレストランのが良いかな??]
「えっ・・・えっと・・・」
[・・・ん??]
「私は桜木さんが良いところで大丈夫です。フレンチお好きなんですか??」
[ん・・・いやー・・・んー・・・]
あっ、嫌いなんだ。
「クスクスッ・・苦手なんですね??」
[んー・・・ちょっとね。]
「何がお好きなんですか??」
[肉。]
「お肉・・・・じゃあ焼肉とかどうですか??」
[えっ?!]
「え??お嫌いでした??」
[いや好きだよ、むしろ大好きだけど・・・嫌じゃないの??臭いとか・・・]
「臭い??・・・・凄く良い匂いじゃないですか??美味しそうな・・・」
[ふっ・・あはははは、心愛ちゃん、面白い。]
えぇー、なんも面白いこと言ってないのに。
すごいずっと笑ってる・・・
[あぁー、笑ったー・・・よしっじゃあ焼肉行こっか。]
「わかりました。」
[後から迎えに行くよ。どこ??]
「いえっ、申し訳ないので現地集合しましょう??どこの焼肉が良いですか??」
[いや夜は危ないし迎えに行くって。]
「えぇー、私子供じゃないんですから大丈夫ですよ。現地集合にしましょう??」
[んー・・・でも・・・猛リハ始まるぞ!!・・あぁー今行く・・・ごめんね、仕事だ・・・]
「あっ、どこでお仕事ですか??」
[○○っていうスタジオ。]
「わかりました。じゃあ近くに行くので、終わったら連絡して下さい。じゃあ失礼します。」
[えっあっ・・心愛ちゃっ]
無理矢理切っちゃったけど、まぁいっか・・・
迎えに来てもらうわけにいかないし。