夏色の初恋を君にあげる
ガヤガヤと騒がしくなる中、近くの席の友達と談笑する。
そして彼女がお手洗いに行ってしまうと、私はスクールバックの中にしまっていたスマホを取り出した。
見ればメッセージの着信がある。
『スーパーの特売で卵を買ってきてー! お願い!』
それは母からの、私の帰りが遅い時にたまに来るおつかいの言伝だった。
文面に視線を走らせた私は、『了解!』の文字を打ちながら教室の時計を確認する。
近所のスーパーの特売は六時から。まだ4時半だから、ここからスーパーに着くまでにかかる時間を考えても、1時間ほど余裕がある。
どう時間を潰そうか考えあぐねていたその時、手の中でマナーモードに設定しているスマホのディスプレイが光り、文字が浮かび上がった。
『今どこにいます?』
たった一言でも、私の心臓を揺さぶるのには十分だった。
「え? 由良くん……!?」
――由良恭弥――
送信者の欄にそう表示されるメッセージに、目を見張る。
『学校の教室にいるよ!』
突然の連絡に動転しているせいか、何度か打ち間違えながらようやく文字を打つと、程なくして返信がきた。
『じゃあ、そこにいてください』
なにか急用でもあるのだろうか。
不思議に思いながらも少しずつ平静を取り戻してきた私は、『OK!』のスタンプを返した。