女を思い出す時
「紀香・・・・」

声が遠くで聞こえる。

「紀香・・・・」

首筋に唇の感触

翔・・・・?

夢と現実のはざまで 私はその感触を
確かめる・・・・・。

生々しい感覚に現実に戻ると夫が
珍しく私を求めてきていた。

「まささん・・・・」

「そうだよ。」

なんだ まささんか・・・・・
落胆する胸の中

夢でいいから 翔に抱かれたい
あの日 ぎこちない二人でも 初めて感じる
甘い快楽だった。

その日 約束の時間まで 私たちは何度も
その空白を埋めるように 求め合った。

セックスなんて知らない二人
だけど翔が 動くたびに私は甘い吐息で切なく喘ぐ

愛する二人が一つになる行為は
どんなテクニックにもかなわない。

夫は 年上でテクニックはあったけど
翔と感じた昇りつめていくあの 感覚には
ほど遠かった。

「気持ちいい?」

夫はいつもそう聞く。

「うん・・・・」
いつしか私はそれを演技で答えるようになった。

私は知ってる
本当の気持ちよさを 

夫とはもうきっと あの時を超える
あの感覚を感じることはないだろう。


演技の奥で 白けた行為だった。
夫のことは 好きだし 尊敬してるし


だけど愛してない。

夫が 元妻を愛してるから
私にも 翔を一番にしてるのは許されるはず。


虚しいね・・・・・・
私たちのこの行為・・・・・


夫は どうなんだろう
私を抱いていて 楽しいんだろうか


ただ ただ 性欲を吐き出す道具
そうなのかもしれない
それでも丁寧に扱ってはくれてる

私の夫への想い

感謝しかない。

だからこの演技も 感謝のお礼・・・・・。


夫から 吐き出されてた感謝の液を
自分の体で受け入れる


もう二度と 私はあのセックスを味わうことはない。

自分のベッドに戻って
疲れて寝息を立て始めた夫の背中を見ながら

この奉仕活動はいつまで続くのだろう

最近は回数の少なくなったけれど
もうすべてが面倒くさい。


いつになったらこの嘘時間から
解放してくれるんだろう。
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