女を思い出す時
いつもの朝

私は 元妻に手を合わせる。

時が止まったままの若く美しい人

夫が起きてきて コーヒーの準備と
トーストを焼く。

夫も毎朝 元妻に手を合わせて少し
遺影に語り掛けている時間があったのに
最近は その時間がとても短くなっていた。

「今日 夕飯いらないわ。
課の人間と 飲んでくるから先に寝ててね。」

「わかったよ。」

「それから週末さ突然なんだけど
泊りがけでゴルフ行ってもいいかな。」

「え?急ね。」

「うん 戸倉がさいい温泉がある
ゴルフ場があるって言うから・・・・。」

「いいよ~。」

「サンキュー。」

何だか嬉しそうだ。
わくわく感が伝わってきた。

「ずいぶん楽しみにしてるのね?」

夫はビクっとした。

「いや 泊まりでゴルフ三昧ってさ
最高な楽しみだから そして温泉だよ。
紀香もゴルフやるんだったらな~
一緒に連れて行くのに。」

「あ じゃ 温泉だけついて行こうかな。」

その気はなかったけど 
ちょっと思う事があって そう返した。

「え?」

夫は明らかにうろたえた。
その様子に 

「あ 嘘嘘~~ごめんなさい。
男同士で楽しんできて。」

そう言うと 

「何だ マジで行くのかと思ったよ。」

今のは 行ったら困るって顔だったよ。
多分 間違いなく 夫には女がいる。

それは前々から気づいてはいたんだ。

そう思うと いろんな夫が変わった事につじつまがあう。

あれだけ大切にしていた命日での様子や
最近飲みや 外泊が増えた事

私の奉仕活動が激変した事
全部なくなって欲しいくらいだけど

スマホを見ながら笑顔隠せない事


夫には 女がいる。

でも不思議に何の気持ちもわかないんだ。

嫉妬もない怒りもない。
私にとっては どうでもいい事だから。

とりあえず居場所があればいい。
真美や錬と会えればいい 夫の稼ぎで
贅沢ができていればいい。

どうせこんな人生だもん
夫によって与えてもらえた家族

それが今の私の生きがいだから。
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