女を思い出す時
取り入れた知識の中で
私は 胎動を感じる日を心待ちにしていた。

鍵のかかる引き出しに
スケジュール表を隠して周期を見ながら
自分なりに 計算した誕生日を想像して
胸が熱くなった。

だけど別れは突然だった。

坂道の通学路をのぼっていた時
下りて来た中学生の ハンドル操作が
効かなくなった
猛スピードの自転車とぶつかった。

全身が痛くて どこが痛いか
最初はわからなかった。

突然突っ込んできた自転車をよけることもできず
それは普通に交通事故だったけど
私は違っていた。

歩行者が集まってきた。
中学生は 勢いで飛ばされて 足が痛いと泣いていた。

「大丈夫?」
その声に
立ち上がろうとしたけど
力が抜けて立てなかった。

「救急車!!」

赤ちゃん・・・・・
私はお腹を薄れる意識の中でさすった。

サイレンが聞こえてきた瞬間
激しい痛みが襲ってくる。
ぶつかったのとは違う お腹の激しい痛みだった。

「赤ちゃん 頑張って
お願い 頑張って!!」

このお腹の痛みはきっと赤ちゃんに
何か異常が起きている
それは私もわかっていた。

痛みとショックで 痙攣が襲ってくる

「ちょっと 大丈夫!?
早く!!こっちです~~~!!」

周りの人が騒いでいる。

この子に何かあるなら
どうか私も一緒に どうか私も一緒に・・・・


救急隊に抱きかかえられた瞬間
熱いものが流れ落ちた。

「出血してるぞ!!」

翔・・・・・・
赤ちゃんを守って!!
私から 翔を奪い取らないように
お願い 赤ちゃんを・・・・・・


目が覚めた時 私は
あの日と同じ 真っ白な天井を見た。

「目が覚めました?」

ゆっくりと声のする方に目をやると
看護師が微笑んでいた。

「あ・・・あの・・・・」
聞きたい事は一つ

「赤ちゃん 赤ちゃんは!!」

自由にならない手を必死でお腹にもっていった。

「後で先生からお話しあるから。」

表情は変わらなかったけど
私はわかっていた。
自分だけが助かってしまった事を・・・・・。

出血性ショックで意識が戻らない間に
大切な人との 大切な命を失っていた。
そして
私の子供は一生涯翔との子供だけになった。









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