女を思い出す時
妻に先立たれた若いシングルファザー
夫が転勤してきた時は
女子社員が色めきだった。

「俺ね 娘いるの。」
隠そうともせず デスクに娘の写真を飾る
夫は堂々としていて
それが逆に 皆から 好感を持たれた。

私には 別にどうでもいい事だったし
夫に全く興味もなかったし 今考えると
本当に可愛いさのない女だったなって

「マジで怖かったよ。
美人で仕事できるけど みんな一目置いてたもんな。」

夫は昔話をするときは
かなり話を盛っているけど 

「可愛げのない部下でごめんなさい。」

私はそう言って答える。

よくこんな可愛げのない女に気をかけてくれて
色々 話かけてくれてるのに

対応が今で言う 塩対応

できれば 誰も仕事以外で私に関わらないでって
そういうオーラは ビシバシ出していたと思う。

娘の保育園の 迎えがあるから
娘が熱を出したから

夫は 娘を何より大切にしていた。
仕事を休んだり 抜けたりする事も多かったけど

その分 出てきた時の 

「迷惑かけてるから 何でも言ってよ。」

女子社員のコピーすらも手を貸してくれるほどだった。

仕事もできる 上司にも部下にも
夫は信頼されていた。

多分 今もきっとそれは変わらない。

いつものように 夫はギリギリまで仕事をして
保育園の迎えの時間を気にしながら 慌ただしく動いていた。

そんな時 アクシデントが起きた。
クレームの電話が入ってきて 処理できない
男子社員の 困惑してる声が耳に入ってきた。

私は 書類を作り終えて帰り支度をしていた。

「マネージャー・・・すみません。」

夫のデスクに顔面蒼白になった社員がやってきた。

数人集まってきて
そのアクシデントは大ごとなのがわかった。


「すぐに行って説明しないとだな。」

夫は 壁の時計をチラッと見た。

「すみません。娘さん迎えに行くんですよね。
ホント申し訳ないです。」

「いやいや。責めるな。
何とかなるから・・・・・・。」

夫と目が合った。
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