女を思い出す時
「あら 紀香さん イメチェンかい。」

ひっつめ髪が綺麗にブローされている私を見て
出勤してきたおねえさまたちが騒いだ。

「紀香さん 顔つきいいからね
昔の有閑マダムみたいだわ。」

誰もいない休憩室で念入りにメイクを
確認して何度も鏡を見た。


「こうなったら 医者たぶらかして
本当のマダムになればいいわ。
そしたら私たちにも 還元してほしいね。」

言いたい事をはっきり言うのは
おねえさまたちの特権なのだ。

「紀香さんなら 医者の奥様になれそう。」


医者なんて眼中にはない・・・・・。
私の夢はただ 愛した人のそばで
一緒に暮らしたい それだけだったけど

それが一番の難問だった。


翔に会った
だけど どうする?

翔とどうなりたいの?今さら・・・・・。


どうなりたいとかそれは・・・・・・
でも今はただ 翔の顔をゆっくり見たい。

ただただ 見つめていたい。


今は何も 浮かんでは来ない。


篠塚 翔


やっぱり 翔だったんだ。

あの綺麗な女性は・・・・・・・
そう考えると 胸が痛くなる。


現実はきっと 私にとっては悲しいだろうけど
だけど・・・・・・


翔に会えた。
一生会えないってそう思っていたのに・・・・。


昨日美容室へ行ってよかったとか
少しは 綺麗に映ってくれたかなとか

私のこと どう思っただろうとか

おばさんになってガッカリしたかな
ちょっとふくよかになった
いや翔といたころより でっかくなって驚かれたかな。


「紀香さん やけに鏡みるね。」

「あ いいえ~なんかまた太ったなって。」

「紀香さんのオヤツもらう量が
すごいからね。おこぼれもらって私たちも
太ってしまったね。ガハハハ」

おねえさまたちの けたたましい笑い声。


一瞬頭をよぎる

病気は・・・・重い病気だったはず・・・・・。

あの人泣いてた・・・・・・。
漠然と覚えていたあの瞬間を思い出していた。
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