女を思い出す時
夫は上機嫌で帰って来た。
私の気分とは真逆で見てるだけでイラついた。

今週末はきっと友人という愛人とゴルフ。
ウキウキもするだろう。

「ん?どうした?」
夫の顔を見てたら 目が合った。


「楽しそうだなって。
まささんって本当に毎日充実してるのね。」

なんて意地悪く言葉を発した。


「いや そんな楽しそうにしてるか?」

「うん。なんか心ここにあらずって感じよ。」


我ながら珍しく突っ掛かった。

慌てる夫が見ていてスッとした。


「人生一度だもんね。
楽しく生きないとダメだわ。
見習わないと私も。」

それ以上夫の返しは必要なかったから
私は立ち上がってその場を離れた。


完全に八つ当たりだわ。
ごめんね心臓に悪かっただろうな。

あなたは裏切ったんだもの。
一生愛するって決めたはずの 真美の母親を。


ずっとずっと変わらずに
真美の母親を一番愛してる男でいて欲しかった。


やっぱり存在する生身の女には勝てないんだ。

翔もそうだったんだよね。
いや自分もこうして利用して家族を作ったんだから

責めてはいけないよね。


ただ二人と違うのは
二人にはそこに愛があるけど‥‥私にはないってことか。


ベッドに入ったら珍しく夫が入ってきた。


ご機嫌とりだ。
どうせ週末若くて綺麗な女を
たっぷり抱くくせに こんな魅力もないおばさんに
なんの用なの?

哀れみ 同情?


罪悪感?


夫のいつもの動きに これが翔だったら?

ボサボサで頭皮とタバコの匂いがした。
私の知ってる翔ではなかったけど


私の体の中に熱いものが芽生えたんだ。


女‥‥‥


私は女だった。


翔に抱かれてるそう思うと
めちゃくちゃに興奮した。


夫との挨拶のような営みが苦痛だった。
抱かれることが嫌だったけど


ここで暮らすのにはこれが私の奉仕だと。


でも今夜は私の中の女が暴れて暴れて
気がついたらもう朝だった。

夫は深い寝息を立てて朝まで
同じ布団の中で裸で過ごしていた。
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