甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい
もうすぐ間宮さんと顔を合わすっていうのに、そんなことばっかり考えてたら彼を目の前にしたとき普通でいられなくなる。

まださっきから1ページも進んでいないその本を閉じると、再びバッグに戻した。

何かに頭がとらわれている時は、やっぱり外の空気を吸うに限るわね。

私はソファーから立ち上がり、財布を入れたバッグを持って少し出かけることにした。

ぷーすけが恨めしそうな顔をして私の足元に飛びつく。

日中はまだ暑いからお散歩は夕方か夜と決めていた。

「ごめんね、ぷーすけ。夕方また一緒にお散歩行こう」

私はぷーすけの前にしゃがみこむと丸い頭をごしごしと撫で、すばやく玄関から外に出た。

マンションの外に出ると、日差しは思っていた以上に強く私の腕を突き刺す。

キャップを目深にかぶり直し、辺りを見回した。マンションの前を横切る道のどちら側に向かおうか。

右には商店街、左には小さな公園がある。

いつもなら、目的によって向かう方向を決めるけど、今はそんなことはどうでもよかった。

とりあえず、人の流れに乗るように商店街へ足を向ける。

住宅街を抜けた先に、年期の入った『みやまち商店街』と書かれたアーチ形の看板が見えた。

商店街といっても店主達の老齢化が進み、半分の店舗はシャッターが下りている。




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