甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい
それでも、シャッターが開いている八百屋、精肉店、駄菓子屋にはいつも人が群がっていた。

今日は暑いし、駄菓子屋でアイスでも買おうかと思い店に入ると、小さい子供を連れた母親が色とりどりに並んだ駄菓子を子供と一緒に選んでいる。

その親子の後ろをぶつからないようにすり抜け、薄暗い店の奥のアイスケースに向かった。

昔ながらのアイスクリンや水色のラムネアイスが数少ないながらも入っている。

色味的にも涼しそうなラムネアイスを一つ手に取った。

少しだけ考えて、もう一つラムネアイスを取り出す。

間宮さんはこんなの食べないかもしれないけど、でもひょっとしたら暑い日の午後、冷凍庫に入っていたら少し喜んでくれるかもしれない。

彼のことに高ぶってる自分を一度クリアにしたくて外に出たのに、やっぱり間宮さんのことがふとした拍子に浮かんでしまう。

私は二つのアイスを持ってレジに向かった。

そんな私をさっきの小さい子供が見ていたのだろうか。

「お母さん!ぼくもあのお姉ちゃんと同じのがいい」

そんな甲高い声が聞こえ、振り返ると子供がお母さんの手をひっぱってアイスケースの方へ走っていくのが見えた。

店の奥から出てきた人の好さそうな駄菓子屋のおばさんが、「はいはい」と言って私の手からアイスを受け取り袋に入れる。

「今日は暑いからドライアイスも入れておくわね」

そう言ってアイスの袋にドライアイスをスコップいっぱい入れてくれた。




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