甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい
痛いくらいに冷たいドライアイス。袋の外から触っても鋭い冷気を感じる。

幼い頃、誤って口に入れて痛い思いをしたっけ。

あの時は母にこっぴどく叱られたけれど、今は何事も経験だなと思う。

ドライアイスの痛みは、きっと経験しないとわからなかった。

あの子供もドライアイスに触れるだろうか?思っている以上に冷たくて火傷してしまうかもしれないけれど、その痛みは成長の証。

そんなことを思いながら、まだどのアイスにするか迷っている子供を横目に店を後にする。

腕時計に目をやるともうすぐ午後三時になろうとしていた。

もうすぐ帰ってくる。

ふぅーと大きく息を吐いて、自分の緊張を和らげる。

久しぶりに会う間宮さんもきっと変わらず素敵なのかな。

長い出張を終えて疲れているだろうけど、きっと涼しげで優しく微笑む目元は変わらない。

早く会いたいようで会うのが怖いような気持ち。

今日が終わったら、今度こそ本当にもう間宮さんとの繋がりも途切れてしまうかもしれないから。

そう思ったら、少しでも早く間宮さんの家に戻りたくなって急ぎ足でマンションに向かった。

家に着くと、ドライアイスに埋もれていたアイスはまだ固くて少しも溶けていない。

「ドライアイスは無敵だわ」

足元でくるくる回るぷーすけに笑いながら呟いた。



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