甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい
遠くの空が赤紫色に染まっていて、間宮さんの香りを感じながら車に揺られている。

さっき抱きしめられたことも、今車に揺られていることもふわふわとしていて現実味がない。

夢ならばなんて素敵な夢なんだろう。

でも、夢じゃなかったとしたら、どうして間宮さんは私を抱きしめたりしたの?

「広瀬さんは何が食べたい?」

突然尋ねられ彼の方に顔を向けると、当然ながら間宮さんのきれいな横顔が近くに見え一気にに顔が熱くなり慌てて答える。

「なんでも食べます」

間宮さんの口元が緩む。

「なんでも?好き嫌いはないの?」

「ええ、とりあえずは」

昔から好き嫌いはしないように育てられてきたから基本なんでも食べれた。

だけど、本当はキノコはあまり好きじゃない。

「僕がよく行くイタリアンのお店があるんだけどいいかい?」

「イタリアンは大好きです」

キノコが入ってなければ。

「よかった」

彼はそう言って嬉しそうに笑った。

なんだか体中が熱くなってくる。胸の奥がドキドキとワクワクの間で揺れ動いていた。

どうしてさっき抱きしめたのかなんて、どうでもいい。

今、この時間を思い切り楽しめばそれでいい。もう二度とないかもしれない恋する人との時間。

暮れていく空を見上げながら、そっと深呼吸した。


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