甘くてやさしくて泣きたくなる~ちゃんと恋したい
間宮さんが頼んでくれたコース料理が目の前の大きな丸テーブルに順番に運ばれてくる。

前菜もパスタもメインも魚介中心の料理で、コースだから出てくるだろうと覚悟していたキノコは出てこなくて安心する。

どの料理もあっさとした味付けでおいしい。

「広瀬さんのお口に合った?」

全ての料理を食べ終え、最後に運ばれてきたコーヒーを飲みながら尋ねられる。

「どのお料理もとてもおいしかったです」

「うん」

間宮さんは嬉しそうに微笑み頷いた。
そして、コーヒーカップをソーサーに静かに置くと足を組み替え私の顔を見つめる

「広瀬さんは今の仕事にはどうして就いたの?お菓子が好きだったとか?」

「いえ、そんなんじゃなくて父の紹介です」

「お父さんのお知り合いが勤めているの?」

「はい。すみません。別にしたい仕事だからとかそんなんじゃなくて」

「別に謝ることないさ。僕だって最初はそんな感じだったし」

「デザイナーのお仕事がですか?」

意外な言葉に思わず視線を上げて彼の目を見つめた。

「そう。父の会社に半ば無理やり入れられてね。うちの会社はとりあえず名前は売れてるからクライアントを自ら選ぶような奢ったやり方をしていてそんなところが一番嫌いだった」

「だから、うちの会社のデザインを引き受けてくれたんですか?」

「そんなこと言ったらかっこつけみたいだな。そんなんじゃないよ。君の会社の仕事は純粋におもしろそうだと思っただけ」

間宮さんは私からすっと目を逸らし窓の外に視線を向けた。

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