身ごもり政略結婚

ドアが開いていたので、彼は駆け寄ってきて私の背中をさする。


「大丈夫か?」


やっぱり大雅さんは優しい。
特に妊娠がわかってからの彼は。


「はい。つわりですから」


なんて言いながら、へこたれそうになっているのは秘密にしておいた。


「飯、作ったの?」
「まだ途中で……」


煮魚はなんとか作ったが、肉豆腐が作りかけで他は手もつけてない。


「もう、作らなくていい」
「えっ?」

「明日からはデリバリーかハウスキーパーを頼む。それに、他の家事もやらなくていい」
「……はい」


とびきり優しい言葉のはずなのに、泣きそうになった。

『役立たず』と責められているように聞こえてしまったからだ。


大雅さんはそんな人じゃないのに。
私が大変そうだから、気を回してくれただけなのに。

ダメだ。
妊娠してからというもの気持ちの上がり下がりが激しくて自分でもどうしていいかわからず、瞳が潤んでくる。
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