身ごもり政略結婚

「なんか食べなくちゃ」


お腹の赤ちゃんには栄養は行っていると聞いたものの、心臓や脳といった大切な部分ができる時期なので心配になる。


冷蔵庫を覗いたものの、なにも食べる気は起こらない。

最近は水を飲むのもつらいことがあり、そんなときは大雅さんが会社で聞いてきてくれた炭酸水を口に運んでいる。

そんなに好きではなかったのに、水より飲めるのが不思議だ。


私はエール・ダンジュのパティシェが作ったマスカットのゼリーを手に取った。

結構なお値段がする一日五十個の限定品なのに、大雅さんが私のために持って帰ってきてくれたのだ。


「はー、ダメだ」


おいしそうなのに、食べる気にどうしてもなれない。


再び吐き気に襲われてトイレに急ぐと、少量ではあったけれど血を吐いてしまった。


「なに、これ?」


病院に行かないとまずい?

焦りながら立とうとしたのにできず、なんとか廊下まで這い出たがそのまま動けなくなる。
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