身ごもり政略結婚

それから一週間。


「結衣! 大変だ」
「なに? もうすぐ夕飯できるよ」


千歳の裏にある小さな一軒家に父とふたりで住んでいる私は、うるさいほどの大きな声をあげている父にため息をつく。


「それどころじゃない」


キッチンに駆け込んできた父は、私をじっと見つめたまま放心している。


「だから、なに?」
「店が続けられるかもしれない」


やっと我に返った様子の父の発言に、今度は私があんぐり口を開ける羽目になった。


「どういうこと? 銀行が融資を考え直してくれたの?」


さっき電話が鳴っていた気がするけど。


「いや、エール・ダンなんとかという会社が、援助してもいいと」


「エール・ダンなんとかじゃわかんな――」と口にしたところで目が大きくなる。


「まさか、エール・ダンジュじゃないよね?」
「そうそう、ダンジュ」


嘘……。エール・ダンジュほどの会社がどうして千歳を?
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