身ごもり政略結婚

幻聴、だよね。

不安で大雅さんに会いたくてたまらないから、彼の声に聞こえたんだよね。


『もう着きます』


そんなことをぼんやり考えていると、電話から麻井さんの声がしてそれとほぼ同時にガチャッと玄関が開く。


「結衣!」
「大雅、さん?」


本当に大雅さん? 
来てくれたの?


「麻井、病院に連れていく。連絡を入れてくれ」


彼はてきぱきと指示を出したあと私を抱きあげる。


「もう大丈夫だ。つらいなら目を閉じてろ」
「大雅さん……」


大雅さんが駆けつけてくれたことに安心したのか気が抜けて、涙がポロポロこぼれてきて止まらなくなった。


病院ですぐに診察を受けることになったが、どうやら妊娠悪阻の状態らしく、そのせいで血圧が低下しているらしい。


「赤ちゃんは元気。でもお母さんがボロボロね」


南雲先生がエコーを置いて私の顔を見つめた。

先生は顔をしかめているが、赤ちゃんの無事を確認した私は、泣きたいほどうれしかった。
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