身ごもり政略結婚

「仕事より大切なことだ。無事でよかった」


彼は私のお腹の方に視線を移して安堵のため息を漏らしている。

そう、だよね。
大切な跡取りがここにいるんだもんね。

私じゃなくて、この子が無事でよかったんだよね。


駆けつけてくれたときはあんなにうれしかったのに、卑屈なことを考えてしまう。


彼はすぐに私の顔に視線を戻したのに……。
きっと『無事でよかった』のは私もこの子ものはずなのに、余計なことばかり考える。

そしてそんな自分が嫌でたまらない。

これが精神的に不安定ということなの?


「結衣。不安なことはなに? 俺で解決できるならする」


次にそう言われて目が泳ぐ。

一番不安なのは、男の子を望まれていること。
努力ではどうしようもないからだ。

それと、もちろん赤ちゃんが健康で産まれてきてくれるかどうか。

他には……自分の体なのに、まったく言うことを聞かないこと。
仕事をしたいのにできないこと……。


そして、こんな私でもママになれるのかどうか。
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