身ごもり政略結婚
千歳の和菓子について話すときの満ち足りたような彼の笑顔を私は知っていたのに……。
結婚の話を持ち出したとき、途端に表情をこわばらせて『政略結婚』ときっぱり言い切った冷たい印象が強すぎて、忘れていた。
まだぎこちない夫婦だけど、お腹の子のママとしてだけではなく、妻として愛されたい。
「結衣、つらい?」
「違います。これはうれしくて……」
我慢しきれず流れた涙に目ざとく気づいた彼が指摘してきたが、首を振った。
「うれしい?」
「はい。ずっとひとりで育てている気になっていたから」
実際に赤ちゃんを育んでいるのは私。
でも、彼と一緒に困難を乗り越えながら、大切に育てていくんだ。
「そっか。俺ももっと父親の自覚を持たないと」
彼は口角を上げて穏やかな表情を見せ、私のお腹に手を持っていく。
「ここに、俺たちの子がいるんだもんな」
「はい」
結婚して初めて、大雅さんと心が通いあったと感じた瞬間だった。