身ごもり政略結婚

いまいち腑に落ちないが、専務に聞いてほしいという雰囲気が漂っているので、それからは黙っておいた。


趣のある立派な数寄屋門が印象的な味楽に到着すると、着物を着こなした仲居さんに広い和室に通された。

するとそこには……。


「あっ……」
「本日はお呼びだてして申し訳ありません。エール・ダンジュで専務をしております須藤大雅と申します」


丁寧に腰を折って挨拶してきたのは、店がなくなることに肩を落としたあのお客さまだった。

前髪長めの黒髪をうまく流し、店を訪れる際より眼光鋭い凛々しい顔つきの彼は、相変わらずスーツが似合っている。


まさか、エール・ダンジュの人だったなんて。
お金持ちだろうなとは思っていたけれど、若くして専務?


「千歳で和菓子を作っております、平岡です。こちらは娘の結衣です。結衣、挨拶しなさい」


驚きのあまりあんぐりと口を開けていると、父にうながされて慌てて頭を下げる。
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