身ごもり政略結婚
「お父さん、作ってくれたんだ」
「反対だったんだって?」
春川さんから聞いたのかな?
「はい。伝統的な和菓子から外れるのは嫌がるんです。でも、アルカンシエルはバリエーションを求めていると聞きましたし」
「うん。お父さんの作る和菓子は本当に素晴らしい。でもアルカンシエルは和洋折衷の試みを盛んにしているんだ。ラウンジのエール・ダンジュのケーキも、最近は抹茶とか小豆を使ったものが好評で」
エール・ダンジュが参入しているホテルは、アルカンシエル東京だけ。
だから白金台の本店だけでなく、アルカンシエルのラウンジも全国各地からお客さまが訪れて大盛況だと聞いている。
「エール・ダンジュも和を取り入れているんですね」
「そう。伝統を守るのももちろん大切。でも新しい道も切り開きたい。お父さんには不満が残るかもしれないけど……」
彼は少し眉を下げる。
頑固な父の心配までしているのだ。
「私が説得します」