身ごもり政略結婚
「ありがとう。ほら、結衣は役に立ってる。エール・ダンジュも千歳も結衣が必要なんだよ。ちゃんと待ってるから焦らなくていい。だからゆっくり進もうな」
「……はい」
それからレモン餡の葛まんじゅうをぱくり。
大雅さんは桃餡を食べている。
「やっぱりお父さんの作る和菓子はおいしいや」
久々に口にした千歳の味に、感動で瞳が潤む。
「うん。桃の餡って斬新だけど、いくつでも食べられそうだ。それに、和菓子が苦手な人でも手に取ってもらえそうだし」
「ありがとうございます」
そこを狙った商品なので、褒められてテンションが上がる。
「あっ、まずい。麻井から電話が入ってる。結衣、無理は禁物だからな。なにかあったら連絡して。行ってくる」
「はい」
彼はジャケットを羽織りながら、慌てて出ていった。
私はソファに座り、ボーッと考える。
そういえば彼は、妊娠前によく飲んでいたワインも最近は一切口にしない。
接待があっても、お酒の匂いをさせて帰ってくることもなくなった。