身ごもり政略結婚

「結衣、少し待ってて。社長に挨拶をしてくる」


大雅さんは、控室に私と麻井さんを残して出ていった。


「奥さま、こちらにお座りください」

「ありがとうございます。麻井さんは行かなくても大丈夫ですか?」


私のことを気遣って残ったなら申し訳ない。


「はい。実は八坂(やさか)社長と専務はかなり良好な関係でして。八坂社長の奥さまも身重で、もうすぐお産まれになるんです。それで、奥さまがご懐妊されたとき子供の話で意気投合して、八坂社長から妊娠や育児に関する書籍を紹介してもらったはずですよ」

「え……」


そうだったの?
この子の話で盛り上がったなんて信じられない。

妊娠がわかった頃って、まだ大雅さんとの距離を感じていたのに。


「まあお互いに厳しい目を持つ人たちですから、仕事は仕事で忖度はなしなのですが、会うたびに必ず赤ちゃんの話をしているくらいです」

「そう、ですか」


それはびっくりだ。
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