身ごもり政略結婚
彼が赤池さんと関係を持つなんて、絶対に嫌。
「奥さま、体調がお悪いですか?」
麻井さんが心配げに小声で尋ねてくる。
「いえ。平気です」
体調は大丈夫。でも心が悲鳴を上げていた。
「控室に参りましょう。無理は禁物です」
「はい」
麻井さんに促されて控室に戻ると、途端に気分が悪くなった。
大雅さん。赤池さんのところに行かないで。
そばにいて。お願い!
心の中で叫んだが、そもそも私たちの間に愛という概念がないことを理解しながらも結婚を選んだのだから、彼を独占することなんてできない。
私の気持ちがいくら大雅さんに向いていても、彼には強要できない。
「奥さま、顔が青いですが本当に大丈夫ですか? まだしばらくかかりますので先にお送りします」
「いえ。私はタクシーで帰ります。あとのことはよろしくお願いします」
「ですが……」
麻井さんは私をさかんに心配していたが、振り切るように控室を出てしまった。