身ごもり政略結婚
こんな立派な料亭に来たのは初めてなので、さっきから心臓がバクバク音を立てている。
「お酒はお召し上がりになりますか?」
「はい、少々」
父は緊張のせいか顔をこわばらせながら須藤さんから酌を受け、私も続いた。
それから料理が運ばれてきた。
「どうぞ」
須藤さんが勧めてくれるも、料理は三人分。
麻井さんはいいのかな? ずっとそこに座っているだけ?
商談なんてしたことがない私は、そんなことが気になってチラチラと秘書の麻井さんに視線が向く。
「結衣さん、どうかされましたか?」
「あの……。こんなに食べきれないので、麻井さん、半分いかがですか?」
思いきって言うと、須藤さんは目を丸くしたあと口元を押さえて肩を震わせる。
あっ、半分なんて失礼か……。
すぐさま反省したけれど、顔が赤くなっているのが自分でもわかる。
「失礼なことを言いました。すみません」
「いえ。まさか麻井のことまで気にかけてくださるなんて、結衣さんはお優しいですね。それでは麻井も同席させていただきます」