身ごもり政略結婚

それから仲居さんを呼び、もうひとり分の追加を頼んでいる。

こんな立派なお食事、一人分でいくらするのだろう……。
やはり余計なことを言ったかも。

なんて終始ドキドキ。

しかし須藤さんはそんなことを気にしている素振りもない。


「麻井がお電話いたしましたように、千歳さんの和菓子を弊社でも取り扱えないかと思っています」


須藤さんが話し始めたので視線を向ける。


「実は弊社とすでに取引のあるホテル『アルカンシエル』から海外のお客さま向けに和菓子を提供したいというご相談がありまして、たくさんの和菓子店に当たってまいりました。ですが、千歳さんの和菓子のレベルが抜きんでていて、是非お願いしたいと」


彼は大まかに説明をして頭を下げる。


「それは、私にエール・ダンジュに入って和菓子を作れということですか?」


父が一転、険しい顔をして尋ねた。

店を存続させたいというのが希望であって、エール・ダンジュの職人になりたいわけではないのだ。
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