身ごもり政略結婚

まだ二十二時前で寝るには早い。

しかしこんな時間に私用の携帯に電話がかかってくることも、明日の約束をしたことも信じられなくて彼と向き合えない。


ベッドルームに行く前に、久しぶりにトイレで吐いてしまった。


「結衣、大丈夫か?」


大雅さんはすぐに気づいて、うずくまる私の背中をさすってくれた。

いつもならいたわってもらえるのがうれしいけれど、今日は触れられるのがつらい。

明日、赤池さんとふたりきりで会うんでしょ?


「ごめんなさい。寝ます」


もう一度繰り返すと、彼は私を抱き上げてベッドに連れていってくれた。


優しくしないで。
ううん。優しくするくらいなら、他の女性のことなんて見ないで。


どうして政略結婚なのだろう。
愛しあって結婚に至っていれば彼のことを責められるのに、私にはその権利すらない。

私はただ、この子を産むためだけのための妻なのだ。


一度は否定したはずの想いが、再びムクムクと湧き上がってきて苦しくてたまらない。
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