身ごもり政略結婚

いつもならうれしいのに、体がビクッと震える。

その手で赤池さんに触れたの? 
……彼女の誘いに、のったの?


「結衣、どうかした?」


彼は私の異変に気づいて尋ねてくるが、首を振った。

『仕事のために赤池さんを抱いたの?』なんて聞けるわけがない。


妊娠してからつわりがひどかったこともあるし、お腹の子を守らなくてはという気持ちでいっぱいで、セックスをする気になんてなれない。

大雅さんも誘ってはこないので、もう私たちは何カ月もそういう関係はない。

男の人の体がどういうものなのか私にはよくわからないが、奥さんが妊娠中に浮気をしたという話を聞かないわけでもない。

しかも、今回は大切な仕事がらみだ。
単なる浮気ともまた違う。

考えれば考えるほど気が滅入る。


「なんでも吐き出して? 俺でできることはする」


なにもしてくれなくていい。
ただそばにいて私を愛して。

たったそれだけの願いなのに、叶わない。


「大丈夫です」
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