身ごもり政略結婚
赤池さんのことと、性別が判明するかもしれないというプレッシャー。
もう押しつぶされそうで、逃げてしまいたい。
「そっか。ゆっくり休んで」
彼は残念そうな顔をして私に布団をかけ直したあと、ベッドルームを出ていった。
翌朝は体調が悪いと大雅さんに嘘をつき、見送りもしないでベッドにいた。
彼は彼女と会ったことについてなにも言わない。
仕事ならなんの会議だったとか、誰の接待だったとか、時々話してくれるようになったのに。
こんなとき、相談できる人がいれば……。
今までなら真紀だったが、彼女はイタリアに飛んでしまった。
私はひとりでいることがいたたまれなくなり、昼過ぎにふらふらと家を飛び出した。
そして気がつくと千歳の前にいた。
「ここしか、ないんだ……」
私の居場所はここにしかないんだ。
この店のために、愛のない結婚を選んだのは私。
だから今さら大雅さんを責められない。
心の距離が近づいてきたと喜んでいたのは間違いだった。