身ごもり政略結婚
「結衣さん?」
ボーッと突っ立っていると、土井さんが気づいて出てきてくれた。
「お久しぶりです」
「どうしたの? ちょっと痩せちゃったかな。つわりがひどいと聞いたけど……大変だったわね」
彼女は出産経験者だから、きっと私の苦労もわかってくれる。
そんなことを考えたら瞳が潤んできて、慌ててうつむいた。
「店、入る? 匂いがダメなのよね。もう平気?」
「どうかな……」
最近は調子がよかったので、もう平気かもしれないとも思ったけれど、今日は受けつけない気がする。
「じゃあ、大将に結衣さんが来てると伝えてくるね」
土井さんは私の返事も聞かず慌ただしく店の中に戻っていった。
それから一分もせずに、父が駆け出してきた。
「結衣! こんなに痩せて……。大丈夫なのか?」
父に心配をかけたくなかったので、わざと会わないようにしてきた。
でも、勝手に足がここに向いていた。