身ごもり政略結婚
やっぱり千歳を守れてよかったんだ。
それなのに、こんなに苦しい。
「アルカンシエル、そろそろどの和菓子店にするか決まるんだろ?」
「そうみたい」
きっと千歳に決まる。
大雅さんが赤池さんのところに向かったのだから。
「うちに決まるといいなぁ。須藤くん、『伝統から外れたデザインはお気に召さないでしょうが、どうか協力してください』って、忙しいだろうにわざわざ頭を下げに来たんだよ。律儀な人だ」
そんなことまで?
どうしてそんなに優しいの?
ますます惹かれてしまうじゃない。
でも、これは私の一方的な想い。
彼は仕事の成功のために私と結婚し、エール・ダンジュの未来のために男の子を望んでいる。
そして、契約にこぎつけるためなら、別の女性との密会もいとわない。
私を愛しているわけじゃない。
もともと誰にでも優しいのだ。
結婚したばかりの頃冷たく感じていたのは、おそらく婚約者に裏切られたせい。
優しいのに、女性には心を許したくなかったのではないかと。