身ごもり政略結婚

なにより千歳を大切に思っている父が、私のために放った言葉に目頭が熱くなる。


「証明……。わかりました。今後、結衣さんを苦しめるようなことがあれば、私はエール・ダンジュから去ります。結衣さんとお腹の子以上に大切なものなんてないんです」


私は唖然としていた。


仕事人間で、エール・ダンジュのためだけに動いてきた大雅さんが、会社から去る? 

お父さんが、店がなくなっても私を取り返すと言ったから、彼も会社を手放す覚悟があると示したの?


でも、その気持ちは本当? 

だって、契約のために赤池さんに会いに行ったんでしょ? 
私との平穏な生活ではなく、仕事の利益を優先したんでしょ?


疑問ばかりが頭に浮かび、声が聞こえてくる方向を呆然と見つめていた。


「信じていいんですか?」

「はい。どうか結衣さんと話をさせてください。私の態度が彼女の誤解を招いたのなら、改めます。彼女とお腹の子を、私に守らせてください」
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