身ごもり政略結婚

大雅さんがこんなに感情をあらわにしたところを初めて見た。

優しさを感じることは何度もあったが、私とは違って気持ちの浮き沈みがあまりない人だと思っていたのに、こんな取り乱し方をするなんて驚きしかない。


「そうですか。少し待ってください」


父はそう返事をして、私が待つ部屋に入ってくる。


「結衣。聞こえてた?」
「うん」

「今日は帰って、須藤くんと話しなさい。でも、どうしても無理だと思ったらすぐに電話しなさい。夜中でも飛んでいくから」


父の優しさに瞳が潤む。


「ありがとう」

「お母さんがいないと、こんなときどうしてやっていいかわからないんだ。男親って本当に情けないよな」


私は首を横に振る。

父が大雅さんにこんなことを言ってくれるとは思っていなかった。
もう十分だ。


「ううん。行ってきます」


私の言葉に、父は目を細めて何度も何度もうなずいた。

玄関に出ていくと、大雅さんが悲痛の面持ちで私を見つめる。
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