身ごもり政略結婚

「結衣……」
「お仕事は?」


時計を見ると、十九時前。
いつもならまだ会社にいる時間だ。


「抜けてきた。結衣を失うくらいなら、なにもいらない」


彼は私の目をまっすぐに見つめて、はっきりと言う。

それがどうしても嘘を言っているようには思えず、私はうなずいた。


「帰ります」
「ありがとう」


私が靴を履こうとすると、大雅さんはスッと手を出して体を支えてくれる。


「ありがとうございました」


そして彼は父に深く一礼してから、私を促した。



マンションに戻りリビングに入ると、なんだか胸がいっぱいになる。

さっき父に弱音を吐いたときは、もうここに戻ることはないのかもしれないと考えたからだ。


「結衣。体は平気?」


彼は過保護なまでに心配している。


「今は落ち着いています」
「そっか。話をしたいんだ。うーん、ベッドで横になったほうがいい?」
「ここで大丈夫です」


そう返すと、彼は私の手を引いてソファに座らせて焦るように口を開く。
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